MASUZUMI HIROTA

道具は長く使ってこそ「道具」。ただ新しくて高価なもの選ぶのではなく、とにかく大切に長く使って欲しいですね。

- HITACHIYAをオープンしたきっかけはなんでしたか?

オープンは3年半前の2011年9月ですが、そのきっかけ40年前です。親父の代から築地でずっと道具屋の商売をやっていたんですが、アメリカからたくさんのお客さんが日本の道具を買いにくるんですよ。アメリカにも道具を送っていました。その時からアメリカで日本食が流行るのではないかという気がしていたんです。
私はオートバイが好きでね。若い頃から世界中を走り回っていたんですが、特に砂漠が好きで、砂漠があるロサンゼルスで日本の道具屋がやりたいなという思いをずっと持っていました。専門店がないし、それにアメリカは使い捨ての文化でしょ。日本の修理して道具を長く使うという文化が商売のネタになるんではないかと考えたんです。本当は60歳になったら渡米しようと思っていたんですが、すぐに来られずに63歳になった時に渡米してきました。

- それでは念願叶って渡米してこられたんですね。でも60代になってからの渡米では大変なこともあったんじゃないですか?

うまくいかないことがあっても、砂漠に行けばストレス解消になるかなと思ったんですよ(笑)。昔から好奇心が旺盛で人がやっていることは何でもやってみたいタチなんです。
私は乗り物が好きで、オートバイをはじめ、飛行機や船舶のライセンスもとりました。50代後半になってからトランペットやピアノも始めました。
世界で1人2人しかできないことをするのは難しいけど、世界で何十万人もがやっていることならできないことはない。普通の人間でも何度も何度も繰り返し練習すれば何でもできるようになると思うんです。世界で一番になれなくても、街で一番くらいにはなれる。これは何にでも共通することですよね。

- お店の客層はどんな方ですか?接客時に心がけていることはありますか?

はじめはお料理教室も日本人のお客さんが多かったのですが、一巡してしまった感じで、今は、英語でアメリカ人向けに教室を開いています。お客さんの約80パーセントが日本人ではなく、日系人かアメリカ人の方ですね。アメリカ人のシェフや日本の料理に興味が有る現地の方なんかがよく来られます。
日本料理や和食というのはこういうものだ、ということを説明しながら接客しています。日本料理の特徴は調理をしすぎないということです。逆に、調理をし過ぎるのが西洋料理。例えると、水彩画が日本料理で、油絵が西洋料理ですかね。油絵は色を繰り返し塗るので取り返しがつくけど、水彩画は一度塗ったら取り返しがつかない。日本料理に使う道具はそれも考えられて作られているので、それを一人一人丁寧に説明しながら販売しています。もちろん時間はかかりますが、しっかり理解して使ってもらいたいですから。お陰で口コミで評判が広まって、紹介で来店される方が多いです。包丁を研ぎに出してくれる方も多いですが、自分の包丁がこんなに切れるとは思わなかった!と喜ばれています。

- 人気の商品はありますか?

均等に売れますが、大量生産で安く売られているようなものは売れ行きがあまり良くないです。鍋やバット類など、安いものと比べると3〜4倍するものもありますから。でもその分長持ちしますので、トータルで考えたら出費は変わらないんですけどね。あえて言うなら、土鍋です。土鍋でご飯を炊くと10万円以上するような炊飯器よりも美味しいんです。ご飯がたってて、甘くてとにかく美味しい!
道具は長く使ってこそ道具だと思います。もし大切なお客さんに、丹精込めて料理を作らなきゃいけない場面があって、自分が50年使い続けている鍋と新品の鍋があったとします。その時、恐らく古くても使い慣れた鍋を使うと思うんです。古ければ、その道具の特性もわかりますしね。新しい鍋はどんなにいい鍋でもその良さがよくわからない。
何十年も使って、指のあとがついてるような包丁を使うシェフもいます。きっともっと切れ味のいいものもたくさんあると思うんです。でもそれを持つことによって、今まで料理を作ってきたという歴史を思い浮かべることができます。それが、職人の生き様じゃないかな。道具はただ新しくて高価なもの選ぶのではなく、とにかく長く使って欲しい。10年、20年…物によっては50年使えるものもある。おばあちゃんが嫁入り道具で持ってきて、壊れても補強されて使い続けて、これが一番いいんだっていう心。日本の職人はそういった心を持っている方が多いと、私は思っています。

- この後の展望を教えてください。

アメリカは広いなとは思っていたが、想像以上に広かった(笑)。まだ順調とまでは言えないので、まずはこの店を軌道にのせたいですね。
でも、サンフランシスコやニューヨーク、中国のマーケットにも魅力を感じています。実はサンフランシコ、ニューヨークの方がネット注文が多いんです。ロサンゼルスでも、ハリウッドやサンタモニカからの方が注文が多いです。拠点をTorranceに置いたのは、すぐにアメリカ人には受け入れられないだろうと思ったからなんですが、日本人は日本に帰れば安く手に入るからなのか意外に日本人のお客さんは少ないんです。それに、この周辺に住んでいるアメリカ人は日本食に興味があると思っていたけど、結果的にはサンタモニカやハリウッドの人の方が興味が高いという感じでした。
日本人のターゲットからアメリカ人への移行がだんだんできてきて、常連さんも増えてきたので、もう少しかなという手応えはあります。まずはこの店を軌道にのせて次のステップを考えたいですね。

- 最後に、道具の使い手にメッセージをお願いします。

料理は科学だといいますが、学問として教育されることはないので、板前は一つ一つ勉強をしていかなければなりません。食材も地域によって全く違うし、日本料理というのは素材を活かして料理しなければならないので、一生勉強が必要です。お肉屋さんやお魚屋さんにしても、ただ値段が高いとか安いということではなく、今が一番美味しいというタイミングを知っているし、お馴染みさんにしか出さないようなものもある。
だから、親父と気があるようなところで馴染みの店をつくると良いと思います。日本でもアメリカでも専門店が減っていて、知識がある方がどんどん減っています。このままだと、食の文化も廃れてしまうのではないかと思います。道具やさんにしても何にしても、専門店や商店を大事にして欲しいですね。

Information

web
http://www.hitachiya.com

facebook
https://www.facebook.com/Hitachiya

yelp
http://www.yelp.com/biz/hitachiya-torrance

2509W PACIFIC COAST HWY, TORRANCE, CA 90505

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